当サイトは取り上げる事業者を選別して、インターネットサービス事業者がそこそこ信頼性のある事業を運営しており、かつ、おすすめできる事業者や、事業者のメリット・デメリットを挙げることが多いです。
しかし2019年以降に登場してきた数々のクラウドSIM系WiFi事業者については、当サイトを立ち上げて筆者が別カテゴリーの記事を書いている最中にネット(あくまでもオンライン上で)で事業者のサービスが通信障害で大炎上するという事態に3月下旬頃にようやく気づいた次第です。
なのでいわゆる乱立した〇〇WiFiの記事を執筆するのは、簡単そうで難しい状況となりました。なぜなら本当なら使えるインターネットが、インターネットにつながらない、または速度が極端に遅いという、ユーザーとしたらお手上げのサービスになっており、まともな評価をしたら何かのギャグとかネタなのか、と思われるからです。
インターネットが使えないのに、「このインターネット事業者は…」という評価をすれば、それは何かの冗談になってしまいます。
なので今後執筆するいわゆるクラウドSIM系事業者についての記事は、どこがいいとか悪いとか、そういうことではなく、クラウドSIM事業者の概要とクラウドSIMのリスク、及びクラウドSIM系ではない信頼性の高いWiFi事業者の紹介といった内容になります。
今回はどんなときもWiFiという事業会社を取り上げます。
目次
どんなときもWiFiとは
どんなときも繋がるWiFiを謳ってサービスを展開
どんなときもWiFiとは、どんなときも繋がるWiFiでどんなときもWiFiという意味です。CMに出演している某タレントがそのように解説しています。
このどんなときもWiFiの特徴は以下の通り。
- データ容量無制限、ネット使い放題
- 3社のキャリアに対応
- 海外も使える
- 月額3,480円のシンプルなプラン
概ねこのような企画で世代の若いインターネットユーザーを獲得してきました。
現在の若い世代のインターネットユーザーは、固定回線でデータ量など気にしないでインターネットをするのではなく、携帯の電波やWiMAXなどで、無線のデータ容量がこれこれでインターネットを使うという考え方になっています。
つまり常時接続インターネットの感覚ではなく、有限である無線の電波のうち、これこれの容量のデータ通信ができるという決められた枠内でネットをすることが前提であり、それに対する不満も少なからずあるのがこの世代の正直な感覚です。
なぜこうなったかというと、iPhone、スマートフォンで動画などを視聴する機会が増え、そのスマートフォンはLTEやWi-Fi接続という無線接続が前提となっているからです。
前述のように、3日で10GBだとか、月何GBだとか、そういう決まりに対するアンチテーゼのようにクラウドSIMを利用した無制限WiFiが登場しました。どんなときもWiFiというサービスはそれを大々的に推し進めた会社です。
現在は新規申し込みを停止して、無制限サービスは2020年10月31日に終了します。
事業会社はグッド・ラック
どんなときもWiFiを運営するグッド・ラックという会社は、新進の通信系企業であるオールコネクトという企業がバックにいて、このオールコネクトはWiMAX事業者であるBroadWiMAXのLink Lifeも傘下に置いています。
オールコネクトは元締めとして隠れているような存在ですが、BroadWiMAXについてはWiMAX事業が円滑に行われており、特に問題があるようには見えません。実際当サイトもBroadWiMAXについてはWiMAX契約でユーザーに利点があるので紹介もしています。
しかし、どんなときもWiFiを運営するグッド・ラックは、WiMAXのようにモバイルWi-Fiが確立した分野ではなく、中国のuCloudlinkが開発したクラウドSIMという新しい技術を導入して、データ無制限という挑戦的なサービスで若者を惹きつけてきました。
クラウドSIMを利用した無制限サービスについては後述しますが、グッド・ラックとしては若者が無線のデータ通信でデータ量不足に悩んでいるところに目をつけて、これはビジネスチャンスだということに気づきました。
そのように無限のデータ通信が可能であるという触れ込みで多くの人を惹きつけて、ユーザーを獲得し、事業は順風満帆のように見えていたのが今年の初め当たりまでです。
どんなときもWiFiが採用したクラウドSIMによる通信障害全容
uCloudlinkの特許技術であるクラウドSIM
クラウドSIM(Cloud SIM)とは、多くのSIMカードをSIM Bankと呼ばれる装置に入れてPaaSというクラウド技術を使って管理し、ユーザーがSIMカードを持たなくてもクラウド上のSIMカードを使って通信キャリアに依存しないで海外ローミングができる技術です。国内でもいいのですが、海外でのローミングを簡単にできる点が利点です。
無制限データ通信のためにある技術ではなく、データ通信において地理的な制限に囚われない、また、キャリアに囚われないという観点が重要であり、無線のデータ通信を無限にさせたテクノロジーではありません。
中国のuCloudlink社はクラウドSIMを始めとした技術で、世界で74を超える特許技術を申請して取得しているようです。
中国の先端企業が開発していることから、イメージとしてはファーウェイや韓国のサムスン電子と同じようにグローバル企業として日本企業のスケールとは一味違う戦略で各国に拠点もあります。もちろん事業規模としては2011年設立なので新興企業と言ってもいいです。
なぜクラウドSIMが障害を起こしたのか
どんなときもWiFIは2020年2月と3月にかなりの大規模障害を起こしているそうです。
クラウドSIMそのものは、簡便な海外ローミングを目指しているものなので、その技術はuCloudlink社とその提携事業者が各国の通信キャリアの電波を使えるように取引をしていれば、ユーザーがどこにいても無線通信、つまりWiFi接続できるメリットがあります。
しかし株式会社グッド・ラックを始めとしたクラウドSIM系WiFi事業者は、クラウドSIMの特徴であるSIM Bankにプールされた多くのSIMカードを使って無制限の大容量通信ができると判断したようです。
実際、大量のSIMカードを無限に仕入れることができて、その作業を永遠に続けることができれば無限の通信が可能です。
その中で、一部のヘビーユーザーによる大容量通信は、当サイトでも言及しているようにほんの数%のユーザーが帯域の50%以上を占めるという現実があります。しかもどんなときもWiFiのような事業者は無制限データ通信を謳っているのでユーザーの帯域占有のレベルも相当なものだったと思われます。
つまり一部のユーザーによってクラウドSIMのSIMカードを大量に消費し、通信キャリア(主にソフトバンクらしい)がSIMカードの供給に追いつかない事態になってしまったことから、クラウドSIMに使うSIMカードを調達できない=ユーザーがクラウドSIMを使えない、要はインターネットに接続できないという障害に至ったわけです。参考:ITmedia Mobile
責任はどんなときもWiFiかuCloudlinkなのか
この通信障害の責任の所在は曖昧になっていますが、どんなときもWiFiのグッド・ラック社はサービスの安定供給のために現在はサービスを一時停止しており、少なくとも自社の無制限サービスがユーザーに可用性のあるインターネット接続を提供できないと判断しているようです。
uCloudlink社は独自技術であるクラウドSIM事業をやめるわけではなく、あくまでもuCloudlinkの特許技術として世界でローミングを実施する事業者として継続しています。
もちろんどんなときもWiFiの通信障害が起こってしまったので、株式会社グッド・ラックとしてはその責任からユーザーに対して保障措置をとっていますが、どんなときもWiFiというブランドが消滅したわけでもありません。
今後この事業者がどのような通信サービスを提供するかは不明ですが、少なくともuCloudlinkの技術を無制限インターネットとして販売することは難しいのではないでしょうか。
無制限を謳ったのはいいが夢に終わる
公共の電波を使う無線通信は、無限にデータ通信をすることがほぼ不可能なことは自明であり、最近出てきた楽天モバイルのデータ使い放題も一定のデータ量に達すると速度制限がかかります。
WiMAXが3日10GB制限をしているのはもちろんヘビーユーザー対策ですが、3日10GBというのは、少し仕様が古いと言えます。というのはソフトバンクの再販SIMカードは300GBのものがあるし、楽天モバイルも実質30日300GBレベルのデータ通信が可能だからです。
そういう意味では300GB使えれば実質無制限、WiMAXは速度制限がありながらもデータ量に上限はないので元々無制限データ通信は存在しているとも言えます。
しかし無制限を謳って本当に速度制限措置もないような、何もペナルティがない無法状態だと、ご存知のようにサービスが崩壊してしまうことが今回露呈してしまいました。
なので固定回線は無制限のように使えるけれども、無線の電波を無制限に使うということは夢のままであり、無限の電波を実現することは不可能であると結論付けることができるかもしれません。
もちろん評判という点では、おすすめすることができないモバイルWI-Fiとなっています。
無制限系WiFiはデータを使っていない人が損をする仕組み
以上のことから、無制限系WiFiというのは一部のユーザーのデータ通信方法によって他のユーザーに影響を及ぼしてしまう(害を及ぼす)ため、インターネットの技術的な仕様としては欠陥があることが分かりました。
考えてみれば、自分がSIMカードを持たないで他の人とSIMカードを共有することを想像すると少し気持ち悪い感覚になります。
データ通信の基本はクライアントとサーバーの関係なので、通信の間にクラウドSIMサーバーを共有すること自体が不自然であるとも捉えることができます。
その結果、多くのデータ通信をする人がSIMカードを大量に消費し、ついでにネットワークの帯域も占有することから、ヘビーユーザーの使い方次第でごく普通のユーザーがデータ通信をできない、または速度が落ちるということになり、その上月額料金が同じであるという不公平なサービスとなります。
なのでWiMAXは一律10GB制限があったり、新進の楽天モバイルも1日10GB使ったら速度制限という規定(楽天は公言していないが)になっています。
どんなときもWiFiをやめた後に契約したいWiFiキャリア
では、クラウドSIM系事業者だと快適なデータ通信ができないのなら、どの事業者にすればいいでしょうか。
ソフトバンク再販系事業者はSIMカードの在庫が少ないですね。それでも入荷している時があるので、チェックしてみましょう。
もちろんソフトバンクがSIMカードを供給しないと言っているわけではないので、経済状況が回復すれば在庫も平時の時に戻ると思います。
Nomad SIM
ソフトバンク回線を利用したNomad SIMは、モバイルWi-Fiを検討した時の第一候補になります。
Nomad SIMは2019年7月にリリースされたレンタルW-Fiで、特徴は以下の通り。
- 契約期間の縛りなし解約金なし
- エリアの広いソフトバンク回線
- 速度は安定している
- SIMカードとモバイルルーターがある
- プランはMINIとBASICの二つ
20GBのMINIと100GBのBASICで、非常にシンプルなんですよね。さらに解約金なしなので、気軽に申し込むことができます。
月額料金は以下の通り。
プラン | 容量 | 月額料金 |
MINI | 20GB | 2,600円 |
BASIC | 100GB | 3,600円 |
料金は多少高めですが、それでも100GBレベルで税込み4,000円切るわけですから、ソフトバンク回線の品質を考えたら安いと言えるかもしれません。
そしてNomad Worksのサポートは優秀で、問い合わせ対応にも真面目に答えてくれますし、回答の速度も早いです。
支払いはデビットカードにも対応しているので、Nomad SIMをレンタルして気軽に高品質なモバイルWi-Fiを楽しめるのは非常にメリットありますね。
楽天モバイル UN-LIMIT
楽天モバイル Rakuten UN-LIMITは、楽天回線エリアだとデータ通信使い放題です。
エリアは順次拡大していますが、2020年現在は主に都市部エリアですね。その他の地域はパートナー回線で繋がります。
楽天モバイルで簡単にデータ通信をする方法は下記にまとめています。
基本的には300万人まで1年間月額料金無料、有料になっても月額2,980円です。
楽天回線ならデータ使い放題で、実質月間300GBレベル、つまり1日10GB使ったら速度制限で3Mbpsとなりますが、3MbpsだとYoutubeの720p動画が見られるのでUN-LIMITというのは嘘ではありません。
楽天回線エリアなら安いSIMフリーのモバイルルーターで大容量通信が可能です。
トラブル続きのクラウドSIMはビジネスモデルの転換が迫られる
と、ちょっと大げさな見出しになっていますが、クラウドSIMで無制限にデータ通信をするというビジネスモデルは、事実上不可能であることが露呈されてしまいましたので、似たような事業者が今後どのようなサービスを展開するか注目したいと思っています。
WiFi需要というのは、現在のスマートフォンを使用したデータ通信が活発なことから今後も伸びていく分野であり、クラウドSIMが炎上したからと言って早々にWiFi事業を畳むことにはならないかもしれません。
しかし今までと同じように無制限を謳っても技術的に、また、ネットワークの公平性の観点でも運用が難しいことがよく分かったと思うので、WiFi事業者としては別のビジネスモデルが求められる可能性があります。
SIMカードの再販をするとしても、どのように他社と差別化するかという問題があります。SIMを売ってそれで終わりなら他社も真似すれば横並びでつまらない業界になってしまいます。
いずれにしてもクラウドSIMのどんなときもWiFiは、今までのサービス内容で継続することは困難でしょうから、今後どのようなWiFiサービスを仕掛けるのか、あるいは消えてしまうのか、当サイトも注視したいと思います。