クラウドSIM事業者を分析・調査して、トラブルが多発したクラウドSIMを検証する企画、第5回。
クラウドSIMが夢のWiFiインターネットと喧伝され、クラウドSIMを採用した事業会社が雨後の筍のごとく乱立した2019年からかなり時間が経過しました。
その結果、どんなときもWiFiの大障害によって、ある種伝説的な大炎上を見せたクラウドSIM界隈。
現在はクラウドSIMの騒動も沈静化し、それぞれが何らかのWiFiキャリアと契約したり、あるいは固定回線を引いたりした人もいると思います。
その中でも、ひと際注意を引く名前のMUGEN WiFi。何しろ無限を名乗るので、非常にスケールが大きい話と言えます。
無限という言葉は有限の反対なので、有限の電波を無限に使えるのかな…と、少し懐疑的になるのも事実。
そこでクラウドSIM事業者であるMUGEN WiFiとは、どのようなWiFiキャリアなのか、使ってもいいのか。
または、MUGEN WiFiのメリット・デメリットを取り上げて、あくまでもインターネット接続事業者としてユーザーに快適なインターネットを提供できるか検証してみたいと思います。
目次
MUGEN WiFiとは
どんなときもWiFiフォロワー系キャリア
典型的などんなときもWiFiフォロワー系WiFiキャリアで、以下の点が共通となっています。
- クラウドSIM採用
- トリプルキャリア対応
- 無制限データ通信
- シンプルな料金体系
有名タレントを広告に起用するような派手なことはやっていません。元々運営会社がそれほど大きくないので宣伝コストをかけないようにしています。
また別の言い方をすると、LP(ランディングページ)一枚系キャリアとも言えます。料金プランやよくある質問などをトップページから別のページに遷移させて表示させることが多いですが、LP一枚系キャリアはサービスのトップページだけで完結しています。
なのでサイトデザインを見ても内容が薄く充実していないので、ユーザーとしてはこのサービス大丈夫かな、と不安になることがあります。
しかし現在は大手や事業規模の大きいキャリアでもLP一枚で済ませてしまうことがあるので、それほど気にすることではないと言えます。
基本はクラウドSIMの無制限データ通信、シンプルな料金体系が売りです。
事業会社は青山にあるsurfave
MUGEN WiFiを運営する事業会社は、一等地である東京青山に事務所があるsurfave。
このsurfaveという会社はMUGEN WiFiのサービスだけではなく、Webサイト制作なども請け負っているようです。ただコーポレートサイトもほとんど情報が載ってなく、どんな受注実績、ソリューション実績があるかは不明です。
このように情報が薄い企業サイトはIT系でよくあり、ベンチャー系だとどんな事業内容なのかあえて詳細をUPしないことがあります。簡潔に事業の名前と、事務所の連絡先、そしてお問い合わせフォームがある程度です。
それが逆におしゃれな雰囲気を醸し出しているとも言えますが、やはり事業の詳細が不明で情報が薄いコーポレートサイトでは、何となく怪しい、信頼性がサイトから分からないという印象を与えることがほとんどです。
ただサイトにセンスが感じられるので、少なくともWeb制作に実力がありそうだ、という雰囲気を出すことには成功しています。
MUGEN WiFiの現状
特にMUGENというわけではない
MUGEN WiFiは、現状では特に無限と言うことはできません。
2020年5月現在、新規申し込み受付を停止している状況です(※その後格安プランは再開しました)。申し込みを受け付けていないということは、インターネット接続のサービスが提供できていないということなので、この時点でサービスの持続性や可用性が無限になっていません。
この申し込み受付停止は、やはりクラウドSIMの正常性がつまづいている、クラウドSIMにつかうSIMカードが枯渇していることが背景としてあるようです。
あるいは通信キャリアに速度制限をされている可能性もあり、実際ネットで利用者の状況を見るとインターネットの速度が出ない、どこの回線を引くか分からない、という評判を見かけることができます。もちろん著しい大容量通信を行うと384Kbpsに速度低下する旨はサイトに書いてあります。
なのでデータ容量制限のない無限のWiFiという認識で契約すると実際には無限に通信できない、むしろ回線速度が極端に遅いという通信障害になる可能性があります。
このようなことから、MUGENのサービスが提供できていない状況であり、今後も同様のリスクを抱える可能性があると言えます。
MUGEN WiFiの料金プラン
MUGEN WiFiの料金プランを見てみます。
プラン | 月額料金 |
アドバンスプラン | 3,880円 |
格安プラン | 3,150円 |
プランは二通りありますが、シンプルと言えます。
海外に行くなら翻訳機能付きの端末でアドバンスプランを利用することができますが、ほとんどの人は3,150円で契約していると思います。
3,150円という価格はユーザーにとっては割とメリットがあります。どんなときもWiFiは3,480円なので、大体3,500円前後のサービスが多い中で3,150円は競争力があります。
格安プランの端末はGlocalMeのU2Sを使う、典型的なクラウドSIMです。
クレジットカードのみはデメリット
支払い方法はクレジットカードのみです。
小規模事業者は支払いにクレジットカードのみしか受け付けられないところが多く、ユーザーとしては支払い方法に口座振替やデビットカードがないことはデメリットとなります。
確実に代金を徴収したい企業の意図は理解できますが、ユーザーの立場に立った運営なら支払い方法をもっと柔軟にすることを考えるでしょう。
そのようなことから、ユーザー目線に立っている姿勢とは言い難い状況です。
契約期間の縛りありはデメリット
もちろん契約期間の縛りありはデメリットです。
縛りなしのサービスが増えている状況で、2年縛りとか3年縛りとか、ユーザーの利便性を考慮しない企業は今後サービスの利用を選択されなくなる可能性もあります。
もちろん期間契約を設定することによって月額料金を抑えられると言えますが、楽天モバイルのように2,980円で期間縛りなし、解約金なしを打ち出していることから、もはや縛りありのインターネット事業者を積極的に契約する動機はほとんどありません。
脆弱なサポート体制
サポートは基本的には問い合わせのチャットサポートのみです。電話番号は一応ありますが、本格的なサポートセンターは当然用意していません。
要は、端末を送り付けてあとは自由に使ってくださいというスタンスなので、問い合わせや電話が必要な場面には弱いです。
つまり回線の障害や回線速度低下、または、料金トラブルなどがあった場合に、連絡がなかなかつかないという事態になりやすいです。
それはどんなときもWiFiなどの事業者も同じで、このようなクラウドSIM系事業者は大手インターネットプロバイダのような誠実なサポートを期待することはできません。
クラウドSIMの利用はリスク大
そして一番の懸念はクラウドSIMそのもの。
クラウドSIMはSIM BankというプールにSIMカードを永遠に供給することができれば、無制限データ通信が可能ですが、常識的に考えて無限にSIMカードを調達することはできません。
なぜならどんなときもWiFiはユーザーの大容量通信とコロナウィルスが重なって、SIMの調達が滞り、サービスが事実上の崩壊に至ったからです。
なのでクラウドSIM系事業者として、ユーザーに対するインターネット接続が通信障害になることから、MUGEN WiFiとの契約はリスクが残ると言えるでしょう。
それを踏まえて、自分はクラウドSIMを使いたいという人はMUGEN WiFiに申し込むことは自由です。
おすすめWiFiキャリア
MUGEN WiFiの無限という意気込みを買って使っている人もいると思いますが、デメリットが多いので新規で考えている人は以下のサービスも検討しましょう。
Nomad SIM
安定して高速通信ができるNomad SIMなら、全国どこでも広いエリアでモバイルWi-Fiを楽しむことができます。
Nomad SIMはソフトバンク回線のSIMカードを再販している業者で、2019年7月にリリースされました。SIMカードのレンタルと、レンタルルーターも扱っています。
Nomad SIMを運営しているNomad Worksは信頼できる事業者で、サポート対応も早いですし、分からないことに丁寧に回答してくれます。
Nomad SIMの特徴は以下の通り。
- 契約期間の縛りなし解約金なし
- エリアの広いソフトバンク回線
- 速度は安定している
- SIMカードとモバイルルーターがある
- プランはMINIとBASICの二つ
契約期間の縛りなし解約金なしは嬉しいですよね。
月額料金は以下の通り。
プラン | 容量 | 月額料金 |
MINI | 20GB | 2,600円 |
BASIC | 100GB | 3,600円 |
基本的には、100GBのBASICで十分だと思います。
以前は300GBプランもあったんですが、現在はトラフィックの増加で廃止になりました。それでも普通に使っていればほとんどの人は100GBで問題ないはず。品質がいいのでおすすめですね。
安定の楽天モバイル
2020年4月にMNO(移動体通信事業者)サービスを開始した携帯キャリアの楽天モバイル。
Rakuten UN-LIMITは、楽天回線ならその名の通り無制限データ通信が売りで、実際に無制限感覚でインターネットができます。
1日10GB超過すると3Mbpsに速度制限されますが、3MbpsならYoutubeの高画質HD 720pが再生できることから、無制限はあながち嘘ではありません。
デメリットは今のところ楽天回線エリアが日本のごく一部なところですが、1年で人口カバー率70%を目指しており、楽天回線エリアに入ったら検討を考えてもいいキャリアです。
システムは完全仮想化ネットワークになっており、社長自ら仮想化でシステムを増強すれば回線もユーザーの増大に対応できると言っているので、ネットワークの可用性にも期待できます。
モバイルルーターを使ったRakuten UN-LIMITの簡単な始め方は以下の通り。
ユーザーにとってMUGENは夢のままかもしれない
以上、ご紹介してきましたが、MUGEN WiFiの無限の夢はいまだに夢と言えます。
なぜならクラウドSIMの障害があったように、電波はあくまでも有限であり、無限に帯域を使えるモバイルWi-Fiは存在しないと言えるからです。
もちろんWiFiをMUGENにするという、果敢な挑戦は評価できますが、ユーザーサポートにもあまり力を入れない、端末を送って放置では評価も口コミも良いものが出てこないと言えるでしょう。
インターネット接続事業者は、まず回線品質を一定に保ち、可用性を上げること。
そしてユーザーをサポートすることをきちんと考慮しないと、ネット事業者としての信頼性が高まることはありません。
少々厳しい評価となりましたが、ユーザーから料金を徴収してインターネット接続事業をやるなら、ユーザー目線でインターネットで最大限のパフォーマンスが発揮できることが、まず最初の段階になります。
そのような信頼性の高いサービスを展開して、初めてMUGENを名乗ることができるのではないでしょうか。