「WiMAXが速度制限~」
「WiMAXは10GB制限がな…」
度々見聞きするこのフレーズはWi-Fi界隈ではお馴染みかもしれません。
実際WiMAX2+のサービスは、ギガ放題というプランながら3日間で10GB以上のデータ通信をすると通信速度を制御されて一定の時間だけ速度が遅くなります。
最初にこの記事で何を言いたいのか先に結論を言うと、WiMAXには速度制限措置はあるがデータ容量は無制限であるということなのですが、この速度制限のため使いにくい回線であるといった批評も目にします。
ただ、速度に制限がありながらも、データ容量の上限なし、つまり本当に無制限のWi-FiサービスはWiMAXだけになります(Y!mobileのポケットWi-Fiにも上限なしプランはあるが通信方式が通常と異なる)。
なぜなら他のWi-Fiキャリアは、大容量通信をした場合にキャリアによる制限措置を講じられる結果となるからです。
ではなぜ、WiMAXはデータ量に上限はないが速度を制限しなければならないのか。
今回はWiMAXの速度制限について言及したいと思います。
目次
速度ではなくデータ量が無制限である
速度制限はあるが月間データ量に制限はない
WiMAXの速度制限は、通信に使う帯域を制御することで、月間に使うデータ容量を制限するものではありません。
一部Wi-Fiキャリアで100GB~300GBのデータ量のサービスがありますが、WiMAXにはそのようなデータ量の制限は設定されていません。
しかし3日で10GB以上データ通信すれば回線速度が1Mbpsになるので、速度制限を回避する使い方であれば月間100GB程度が目安ということになります。
実際に帯域制御されると以下のようになります。
このデータではぴったり1Mbpsになっています。YoutubeのSD動画配信は見られる程度、サムネイル画像が多いリッチコンテンツのサイトであまり速くないかな、と感じるスピードです。
プログラムによって全自動で帯域制御できるようになっており、おそらくNTP(ネットワーク・タイム・プロトコル)という時間を合わせるプロトコルを使って、18時~26時の間にフルオートマチックで帯域を制御するのでしょう。
この3日10GB制限という規制が、大容量通信をするとあたかも何かの罰を受けているかのような、何かWiMAXにコントロールされているような感覚があることは否めません。但し、この制限がなかったらデータ通信のトラフィックが間違いなくパンクするでしょう。
データ通信というのはデータだけではなくて、制御用のパケットも含まれます。そして制御だけでなくエラー訂正などの符号もあります。
なので一回サーバーにアクセスするだけで実際のデータ以上にデータ通信にかかる容量というのは大きいと言えます。
そのような状況の中でも、独自のWiMAX回線は大容量通信をした場合に他のWi-Fiキャリアのように通信規制を受けて128Kbps以下になることはありません。
しかしWiMAXは10GB制限のサービスなのか、という印象が強くなっていることは確かにあります。
WiMAXに速度制限がある理由
使い放題だがそんなに使わないでほしいという本音
通信サービスを提供する事業者(電気通信役務(えきむ)をする事業者)には、「あまりインターネットを大量に使わないでほしい」という本音があります。
筆者がサーバー運用保守をやっていたころ、自分で自宅サーバーを構築して運用する同業者の人間がいました。
その人は個人向けISPを使っているのに自宅サーバーに大量のトラフィックを受けているので、ISPから警告や注意のメールが来たと話していました。
実際にネットワーク機器から手動で帯域制御されたかどうか不明ですが、固定回線でも限度を超えた通信をするとISPから叱られます。
なぜかというと、ネットワークの帯域を占有すると他のユーザーに影響を及ぼすからです。
なので、WiMAXとしては使い放題を謳っていて実際に容量の制限は本当にありませんが、UQコミュニケーションズの本音は「無制限だけど本当はあまり使ってほしくない」ということになります。無線なので余計そのような本音があります。
それが3日で10GBになったら速度が1Mbpsになるという提供条件になっています。
一部のヘビーユーザー対策である
回線の帯域はほんの数%のヘビーユーザーが50%を占めていると言われています。ほとんどの人は月間数十GBで過ごしているのですが、ヘビーユーザーは数百GBを使うことになります。
これらのヘビーユーザーを相手にしないといけないことを事業者は分かっています。要は、一部の人間のために自社のリソースを多大に消費することになるのです。
なのでなるべくその帯域の占有を避けたいという思惑があり、事前に10GB使えばこれこれの処置があるよ、という規制を設けることによってヘビーユーザーが本当にヘビーに使うことをある程度抑止することになります。
電波への同時接続に限界がある
当サイトでは何度か言及していますが、基本的に電波は有限です。キャリアのLTEは接続端末数が1万台/1k㎡程度とのことで、多くの接続端末があるとネットワークが混雑します。
WiMAXは、1k㎡に1万台ものモバイルルーターが集まることは少ないかもしれませんが、基地局がカバーするエリアでモバイルルーターを使うユーザーが多ければ多いほど速度が遅延します。
そのような中で少しのユーザーが超ヘビーにインターネットを使ったら、WiMAXが使うネットワークの帯域が狭くなることは事実で、電波の同時接続に限界があるのに帯域を占有されればもはや神の手のように帯域を手動で制御することになります。
しかしWiMAXは帯域制御を10GB一律にすることによって、WiMAX事業者が「神の手」を使えないようになっています。
このように、速度制限がある理由は大まかに以下になります。
- そんなに帯域を使わないでほしい本音
- ヘビーユーザー対策
- 電波の同時接続数に限りがある
ユーザーとしてのWiMAXの使い方
1. 実質30日で100GBだと思って使う
3日10GBで速度制限なので、速度を制限されたくなければ月間100GBサービスだと思えばいいです。
それじゃあ使い放題じゃないし、100GBだとしたら高いサービスだよね、という声も出てくると思いますが、ほとんどの人が月間100GBいってないインターネットの使い方でしょう。
もちろんネットの使い方は人によって違うので、かなり容量を使って、使ったデータ量をほとんど意識していないユーザーもいます。
しかし実際にWiMAXの速度は、平日日中にかなり速度低下していることは事実です。2020年4月現在、以下のように筆者の環境では日中の速度が6~7Mbpsになってしまっています。
100GBサービスと捉えても、褒められる速度ではありません。
2. 場合によっては300GB以上も可能(非推奨)
速度制限を毎日繰り返すことになりますが、300GBだろうが600GBだろうがデータ量だけは自由に使えます。
毎日夜間帯に速度制限があるけれども、日中はデータ使い放題。暇人ならこの使い方は可能です。
しかし昨今のビデオ通話需要で、暇人でなくても速度制限になるほどデータを使っている状況になっているユーザーもいるかもしれません。
WiMAXの使い方はその人次第
速度制限が嫌ならもちろんWiMAXをやめることも可能です。WiMAXを使うのも自由ですし、やめるのも自由です。
最初からWiMAXではないサービスを選択することもできます。
しかしモバイルブロードバンドが加速していく中で、WiMAX需要が落ち込む時が来るのかどうか分かりません。
都市部エリアだと第一選択肢になってしまうWiMAXなので、ユーザーはWiMAXと上手に付き合う方法もある程度考慮する必要があるかもしれません。電波の捕らえ方しかり、速度制限しかり。
そんな気難しいWiMAXですが、ユーザーの使い方としては上手く3日で10GBの帯域制御をスルーしたり、あえてデータ量を使いこんだりすることができます。
基本的にはデータ量だけは上限がないので、どんなに使ってもユーザーは怒られません。その代わり10GB制限によってインターネットサービスを提供し続けられる可用性を維持することが可能になっています。
じゃじゃ馬なWiMAXを使うには、ユーザーにもある程度の工夫が必要なようです。