年末に報道があったNTTの社名変更。長年親しまれてきた名前が終わるとのことで話題になりましたね。
ただ、市民にとってNTTは身近だけれども「よくわからない」存在。
あのNTTが名前を変えるってどういうこと?
今回はNTTの名称変更と今後の通信業界についてお送りします。
目次
2025年NTT社名変更で通信業界激震か
NTTが名前を変えるとはどういうことか。
そもそも33万人が働くNTTとは何か。
NTTが社名変更へ
2023年には既に社名変更したいと言っていたようです。電信も終わっているし実態にそぐわないと。
NTTの正式名称は「日本電信電話」。電信とは符号を送受信する電気通信で古くは戦時下のモールス信号(モールス符号)が有名。
電報も電信ですが、まだ電報サービスは終わってなく祝電などに使うD-MAILとして存続しています。
それも含めて実質使われていない電信電報をやめて、2025年に社名も変える予定です。
そもそもNTTとは
そもそもNTTは旧郵政省管轄で、郵便の父である前島密まで遡ります。
なので昔は郵政省でもなく逓信省(ていしんしょう)。郵便が前島によって創設され1885年に逓信省が発足。
以前は大手町に「ていパーク」(逓信総合博物館)がありました。古い建物で昔のポストや電話交換機を展示してましたね。
つまり19世紀まで遡って国として電話と電気通信を運営する巨大通信企業。
現在のNTTは持株会社で、電話と光回線などはNTT東西で運営。
分離したドコモやNTTコミュニケーションズは子会社化して再び結束。IT業界には重鎮NTTデータがあります。
NTTグループで働く人は約33万人、グループ企業の数は全世界で900以上とのこと。
1985年に民営化しましたが、NTT(持株と東西)は代表的な半官半民企業で資本は政府つまり財務大臣が3割以上の株式を持っている。
要は運営に国の意向が強く反映されるわけ。
半官半民の会社はたくさんあります。日本航空(JAL)は元々政府主導の特殊会社から完全民営化しその名残を残す。
日本郵政は政府が株式の3分の1超を保有する形になっています。
NTTが果たしてきた役割
古くは市民の通信手段が電話や電報しかなかった。
昔の家にはダイヤル式の黒電話があって(緑色のプッシュ式もあった)、税別72,000円という高額な電話加入権を支払って電話を引いたのです。
72,000円ですよ!笑。当時で。
(ちなみに電話加入権の72,000円は戻ってこない)
どこでも電話ができるようにする、そしてアナログの電話交換機の運用も多額のコストがかかったようです。
光ファイバーの研究開発もNTTなくしては達成できず。1980年代に日本を縦断する光ファイバー網を作っています。
実は全国の地下に「とう道」と呼ばれる通信ケーブルが引いてあるトンネル式土木設備があります。
これがあまり知られていないんです。
一般市民が無意識にインターネットできる理由は、とう道のような線路を運用保守して局舎やNOCで24時間365日ネットワーク運用してるから。
楽天やソフトバンクでさえ、とう道の光ファイバーを使わないと電話とネットの電気通信役務(えきむ)を果たせないのです。
今はNTTを使わなくても電話とネットができますが、厳密に言うとNTTの線路を使わなければお茶を飲みながらインターネッツできないんです。
ドコモの携帯電話は電電公社時代の1979年、民間用で世界初の自動車電話が前身。その後NTTが1985年にショルダーフォンを出す。
NTTとドコモが日本の携帯を牽引してきたのは事実。
一世を風靡したiモードも世界初のケータイ・インターネットでした。
グローバル戦略は功を奏するか
NTTが名前を変えたい理由はグローバル戦略。世界ではアップルだのグーグルだの巨大IT企業が覇権的。
それに対抗したいんです。
NTTグループはリモートワークに力を入れて新しい働き方をアピールしてましたし、「官」のイメージから脱却したい。
過去にはドコモが4回海外投資に失敗しています。2000年代にオランダ、英国、米国でM&Aしたが撤退。
その後、インドでタタ・グループに出資して2014年に撤退しています。
なんだけれども、国内市場は人口減少していく中で頭打ち。海外戦略をやっていかないと市場規模が縮小していく。
2024年にドコモは「ドコモ・グローバル」を立ち上げて、東南アジアなどに通信インフラの輸出を始めたようです。
楽天モバイルと同じようにオープンRANを売り込む。他にもBtoBで遠隔医療や自動運転などを手掛けると。
なので、もう既にNTTグループのグローバル化は始まっています。ドコモの新社長は初めてNTT出身じゃない転職組(!!)
そしてNTTは新たな情報ネットワーク基盤である「IOWN構想」に向けて動いています。
2024年12月に最大800Gbpsで拠点間を結ぶ「All-Photonics Connect」を提供開始。
一般ユーザーが意識し難いところですが、通信キャリアのバックボーンネットワークでは既にIOWNが使える状態になっているようですね。
競合他社と通信業界の今後
今回NTT法に関しては割愛しますが、KDDI、ソフトバンク、楽天の3社は最近のNTTの動きが気が気でない様子。
ドコモやNTTコムなどが再び統合する動きの中、とう道にある線路をNTTグループが自由に運用するようになればどうか。
「全国の光ファイバー貸出料金を値上げします」という鶴の一声でKDDI・ソフトバンク・楽天の3社は、
「え〜!!NTTさん値上げっすか〜そりゃないっすよ〜!!」
となる。
まあ、どのみち昨今のインフレで通信料金は上がっていきますけどね。
光ファイバーや携帯電話など元々技術開発力のあるNTTなので、IOWNや海外へのO-RANネットワーク輸出がうまく行くと巨人復権となります。
競合他社は高をくくっていると「NTTさんありきの商売」をしている現実を思い知らされるかもしれません。
巨人NTTがどうなるかウォッチする
NTTは巨人です。
1989年、世界の時価総額ランキングは
1位:NTT(1638.6億ドル)
2位:日本興業銀行(715.9億ドル)
3位:住友銀行(695.9億ドル)
4位:富士銀行(670.8億ドル)
5位:第一勧業銀行(660.9億ドル)
6位:IBM(646.5億ドル)
でした(!!)。
後のレノボとなるIBMの倍以上だったんですね。
それからバブル崩壊を経て21世紀になり、巨大IT企業の台頭で時代は変わりました。
巨人NTTが再び結束を強めてきた今、通信業界はどうなるのか。
社名を変えて世界を席巻するグローバルIT企業になるのか。
2025年以降は元祖情報通信であるNTTをウォッチする時間が増えそうですね。