2020年2月18日にNTT東日本から10Gbps光回線サービスである「フレッツ光クロス」を提供することが報道されました。
2年ほど前の2018年に、nuro光やauひかりが先行して一部エリアで10Gbpsサービスを開始することが発表され実際にサービスが提供されています。
その時も驚きましたが、筆者もそのうち自宅を10Gbpsにするのかな、と漠然と思いました。
しかしそもそも1Gbpsのサービスで実行速度が半分の500Mbpsも出れば十分速いです。
ブロードバンドが普及し始めた2000年前後は、速度が理論値で1.5MbpsのADSLが主流でした。1.5Mbpsでもとても速いと思った記憶があります。
光回線の10Gbpsサービスはユーザーにとって必要なものなのでしょうか。
目次
必要性に疑問を感じざるを得ない10Gbps
10ギガビットとは一体何でしょうか?
ギガビット (gigabit) は情報や記憶装置の単位であり、Gbit または Gb と略記される。
1ギガビット = 109ビット = 1,000,000,000ビット
8 ビットは 1 バイトと等しいので、1 ギガビットは 125 メガバイトと等しい。
ギガビットは転送速度だと1Gbps=1000Mbpsです。
バイト換算では1バイトは8ビットなので、1ギガビットは1000メガビットと考えれば125メガバイトになり、ファイルシステムで扱われる1024ビット単位で考えるなら128メガバイトとなります。
これは1秒間で10キロバイトのメール1通を12,800通送ることができます。それが10ギガビットであれば10倍の128,000通のメールを1秒間で送ることができる速度です。
10メガバイトのエクセルファイルなら1Gbpsで1秒間に12.8個、10Gbpsで128個転送可能となります。1秒間に、です。
普通に考えて1秒間に10MBのエクセルファイルを128個も相手に送信することはありません。
そもそも10ギガビットの速度を必要とするコンテンツがない
Youtubeを視聴するシステム要件を見ると、500Kbps以上のインターネット接続とあります。要するに低画質だと1Mbpsも必要ありません。
高画質のHD 1080pで必要な速度は5Mbpsです。これは一昔前の100Mbps光ファイバーでも十分対応可能です。
なので1Gbpsあれば、例えば家族4人がそれぞれ一人ずつ個別に動画配信を同時に視聴しても、転送速度に有り余るほどの余裕があります。
このように、動画などのストリーミングでも5Mbpsの帯域を4本、すなわち20Mbps確保できればいいわけです。
4K動画で20Mbps必要ですが、それでも4人同時で80Mbpsなので1Gbpsの回線で十分余裕があります。
WindowsやLinuxOSのような4~5ギガバイトくらいの巨大なISOファイルを複数同時にダウンロードしても、1Gbpsで十分と言えます。ハイレゾの1ギガバイトファイルも同様です。
現状10Gbpsの回線を必要とする巨大ファイルはないと言えます。
大きいファイルをやり取りするなら10ギガが良い
前述のLinuxのようなオペレーティングシステムそのものはファイルそのものが大きいので、OSをダウンロードするなら回線速度が速いに越したことはありません。
またはファイルサイズが1GB程度のハイレゾファイルや、HD動画のファイルです。
このようなギガバイト級のファイルをやり取りするなら、より回線速度が速い方がダウンロードやアップロードが短時間で済みます。
例えば大きなファイル転送を1Gbpsで10秒かかったのが、10Gbpsなら1秒で済みます。
最近は動画を配信したり、編集するために動画ファイルを共有したりすることもあるので、回線のリンク速度が速いに越したことはありません。
ですが、そのような巨大なファイルのやり取りやオンラインゲームをするユーザーはごく限られています。
1Gbpsでも帯域を持て余しているユーザーが多い
このようなわけで10Gbpsの方が、転送に伴う時間がかからないのは確かです。しかしそれは、相手のサーバーも10Gbpsで繋がっていないといけません。
さらにユーザーがより少ないサービスでないと10Gbpsにしても効果があまりなく、ユーザーが多い動画配信系サービスであれば帯域を一人に10ギガビット与えることはありません。
なので現状の1Gbpsの回線速度で実行速度が200M~500Mbps程度出ていれば、十分動画やサブスクリプションサービスを快適に、しかも複数で同時に楽しむことができます。
1Gbpsの光回線でも半分の500Mbpsを活かしているユーザーはほとんどいないでしょう。
なぜなら先述したように動画ストリーミングでも必要なシステム要件が100Mbpsいかないからです。
国民の半数以上がオンラインゲームをやるような国なら10Gbpsは必要かもしれませんが、現状日本はそのような国ではありません。
アメリカでもそのようにならないでしょう。
回線事業者やプロバイダに求められるのは可用性
透過性や可用性がユーザーにとって大事である
日本は無線を含めてブロードバンドが当たり前になりましたので、回線速度は何も考えなくても十分速くなりました。
インターネットの速度は、ダイヤルアップやISDN時代はとても遅かったです。Webサイトの小さな画像を表示させるのに10秒かかるとか、そんな世界です。
その速度を経験しているユーザーは現在の1Gbps光ファイバー回線に十分満足していると思われます。
そうでない世代は、元々家の回線速度が速いのでインターネットはページがすぐに表示されて動画も見られる認識です。
その人たちも現在の回線で十分と思っており、Wi-Fiで手軽に、そして身軽にミニマルにインターネットをしています。
そのような中で回線事業者やプロバイダに求められるのは透過性や可用性だと思われます。
例えばクラウドサービスがデータセンターで障害をどれだけ起こさないか、という故障率の問題があります。そして携帯電話の大規模障害があります。
このような人々が共有して使っているサービスが、どれだけユーザーが常に使える状態で運用できるかという問題の方が優先事項なのではないかという気がします。
筆者は携帯やクラウドで接続できなくて困った経験はそれほどありませんが、いざ携帯電話やひかり電話を利用しようとして接続できないのはユーザーとして困ってしまいます。
なので、結論を言うと「速度の高速化を求めるのはもういいから可用性を上げることを考えようよ」ということになります。
回線速度は事業者の販売戦略的なところがある
述べてきたようにインターネットは現在とても速くなりましたので、ユーザーは440Mbpsあるいは1Gbpsあれば十分に快適に通信できています。
もし10Gbps必要な存在がいるとしたら、それは事業者が単価の高いサービスを売る目的として必要と言えるでしょう。
もちろん速いに越したことはないので、ユーザーが10Gbpsサービスを安く低廉に利用できればいいと思います。
しかし、NURO光の工事費は40,000円で月額基本料6,480円、フレッツ光クロスは月額利用料6,300円です。これはもちろん安い料金とは言えません。新しくて速いサービスだから高くて当然です。
ですが、10Gbpsの速度を必要とするコンテンツがなく(4K動画でも必要ない)、提供する回線事業者もプロバイダも運用コストがかかります。
そのような料金も運用もコストがかかるサービスが普及するでしょうか。
nuro光やauひかりの10Gbpsでも、開始から2年経ってまだ提供エリアがごく一部で、かつ料金が高いサービスです。
筆者が個人的に考えると10Gbpsの普及は相当時間がかかるのではないかと思います。工事も大変で、集合住宅は5階建て以下の建物に限定されます。
普及が厳しい、無理、とは言いませんが、1Gbpsで十分なのにさらに料金が高いサービスを、消費者はなかなか選択できないのではないでしょうか。
回線速度の高速化は良いことだが他にも重要なことがある
なので、速度の高速化は技術的に十分可能なことがよく分かるサービスですし、インターネットが高速であることは良いことですが普及に疑問符がつきます。
付け加えると携帯で5Gという高速通信が実現されますが、ミリ波という電波が人体に悪影響を及ぼすことが指摘されています。
5Gの速度も必要なければミリ波レーダーも必要ありません。そして帯域幅が大きくなればなるほど、事業者もユーザーもコストがかかる。
そういう状況を考えると10ギガビットサービスは、光回線が飽和状態に近くなった時のための販売戦略としての目的しかないのではないか、と考えられます。
日本の住宅の通信環境が光回線に置き換わった時、さらに売上を確保するための目的であれば10Gbpsは必要でしょう。技術革新は求められますし、ユーザーも回線速度が速いほうがいいです。
それには条件があって、「料金が安くなる」これさえ達成できれば10Gbps光回線は販売できると言えるのではないでしょうか。
それでも他にもっと重要なことと言えるのは、ネット回線に「トラブルなく常に使えること」が大切と言えます。